《出張だらだらMTG〜「まつがん」クイックインタビュー&フィーチャーマッチ〜》 by Shimizu Naoki

「まつがん」という名前を聞いたことの無いプレイヤーは、この記事を読者の皆さんの中では少ないのではないだろうか。
多くのMTGブログが集まるDiarynoteの中でも絶大な人気を誇る「だらだらMTG」筆者であり、その個性的な理論や文章には関東圏ではファンも多い。
彼は「不殺」とは真逆の「ビートダウンの誓い」を立て、最近ではどんな環境でも1マナ域から始まるウィニーデッキで草の根大会を駆け抜けている。また、彼はドラフトをするたびにその記録日記を丁寧につけることでも知られている。


そんな「まつがん」こと伊藤 敦(東京)がドラフトをしているというので、早速インタビューを行ってみた。


第一声

「1ボツが確定した」


おいおいおい一体何が起きたんだ、とカードプールを見てみると・・・。
合計3枚しかない《記憶の放流》と《溺れさせるものの信徒》。

どうやらこれらをかき集めるドラフト、「ライブラリ・ビートダウン(本人談)」を決めうちしたものの、パックの出が悪く失敗してしまったようだ。
どのくらい決めうちかと言えば、


「初手で《炎渦竜巻》という環境最強クラスのアンコモンを流して、青黒の土地《沈んだ廃墟》をピック、更に1週するだろう《溺れさせるものの信徒》を回収するプラン」

だったと言うのだからその決意は硬かったに違いない。決してレアだったから取ったわけではないのだ。


しかし、シャドウムーアが世に現れてまだ1日しか経っていないというのに、はやくもこのような理論を完成させている
伊藤には筆者も驚きを隠せない。おそらく事前のスポイラーの研究を日夜行ってきた結果に違いない。


筆者「この理論はどうやって完成させたんですか?」
伊藤「妄想

嗚呼、さすが「まつがん」。


また、あまり強くないスペルとされる《呪文の吸い上げ》が3枚入っていた件に関しては 

伊藤「このアーキタイプは序盤に《信徒》のような軽い生物を並べていくのが前提だから、効果がかなり期待できる。
 それに、《吸い上げ》自体が軽いからそれで《信徒》も起動しやすい。」

筆者「なるほどそれは一貫性がありますね。で、当然この理論は?」
伊藤「妄想

実際のデュエルに大きな期待がかかるところである。


話を構築に移して

筆者「伊藤さんといえば《サバンナ・ライオン》のような1マナパワー2なのですが・・・《ぼろ布食いの偏執狂》は待望の新戦力では?」

伊藤「1マナ2/1になんて興味が無い」

一蹴されてしまった。


伊藤「《モグの戦争司令官》《苦花》《ケルドの匪賊》みたいなブロッカーもいるし、それほど環境的に強くない」
筆者「ということは《ゴールドメドウの重鎮》も弱いのでは?」
伊藤「いや、常に先手を取ればキスキンは強い。白には赤に無い展開力がある」

これぞまつがん流超理論。


伊藤「というか、例えば《偏執狂》と《タルモゴイフ》、あとは火力みたいなデッキは皆使うに決まってる。メタの中に入ってしまうようでは三流なんです。

ただ強ければ良いというものではない。独自の理論で、独自の道を切り拓いていくのがまつがん流なのだ。
そんな伊藤のシャドウムーア注目のカードは
「《大爆発の魔導師》。これからフィルターランドに《反射池》が溢れかえる。このカードはそんな環境において最高のアンチテーゼ!」

やはり彼の根にあるキーワードは「環境に対するアンチテーゼ」なのだろう。
今や誰もが最新のデッキをコピーし使える時代となったが、そんな中で独自路線を戦い続ける伊藤の活躍にこれからも期待したい。


(追記)
伊藤は1ラウンド目を見事《信徒》によるライブラリアウトによって勝利した。「1ボツ確定」こそが、妄想だったのかもしれない。
続く2ラウンド目も、青白デッキに対して《気紛れ歩き》のビートダウンによって勝利。乗りに乗っているが、最終戦の対戦相手は
第三期ミスターPWC候補の1人であった草の根の強豪、KAKAOこと中村肇である。


この注目の試合をフィーチャーしてみよう。



Round3 伊藤敦 vs 中村肇
中村のデッキは《炎渦竜巻》《災難の大神》《石の顎》など強力なカードを擁する赤単デッキ。


しかし全体的にカードのコストが重く、曰く
「《魔力の吸い上げ》がまずい」とのこと。
構築時に同じテーブルだったため、互いにデッキの内容を知っているのである。
皮肉なことに、伊藤のデッキには実に3枚もの《吸い上げ》が入っているのだ。


Game1
伊藤はデッキのキーカードである《溺れさせるものの信徒》でスタート。だがデッキのコンセプトを知っている中村は
これを3ターン目に《刺す稲妻》で除去する。何故2ターン目ではなく3ターン目なのかと言えば、当然《魔力の吸い上げ》
を警戒してのことである。
伊藤の場には何もなくなったのでここで攻めに行きたい中村だが、送り込んだクリーチャーは《血印の導師》と力不足。
その後6ターン目にしてようやく《つまみ食い貯め》を送り込む。
一方伊藤もこれを通さざるを得ず、とりあえずエンドに《魔法を回すもの》で応戦、更に《胸壁の見張り》で場を固めにかかる。


《つまみ食い貯め》をどうにかしなければならない伊藤は、これに《引き霊気》。再召喚された《つまみ食い貯め》には《魔力の吸い上げ》
を2発お見舞いする。伊藤は《絹縛りのフェアリー》で航空戦線を強化しつつ防御を固めていく。


結局この飛行部隊が止められない中村、最後に《怒りの反射》から逆転を図るがこれも《魔力の吸い上げ》で弾かれてしまうのだった。


伊藤 1−0 中村


Game2
先ほどは土地を引きすぎてしまった感もある中村、一転第2ゲームは順調だ。
《血印の導師》から4ターン目に《煤歩き》、更に《災難の大神》を場に送りこむ。
タップしてしまえばどうということはない《大神》なので《絹縛りのフェアリー》で押さえに行くが、これは
《石の顎》で墓地へ直行。


なんとかして対処しなければ負けてしまう伊藤は《大神》を《遅鈍の塵》で弱体化させて《技鋸の徒党》で押さえようとするが、
この目論見も《邪教印の燃えがら》に阻まれてしまう。
苦し紛れにブロッカーとして呼び出した《気紛れ歩き》も、《煤歩き》をブロックした際に《傷跡》で撃墜され、
伊藤の戦線は完全に崩壊した。


伊藤 1−1 中村


Game3
先手は伊藤。
「相手が後手のほうが1枚多く削れるだろ」
と言う。そうだ、そういえば、伊藤のデッキはライブラリ・ビートダウンだった。


そんな伊藤はまた1ターン目に《溺れさせる者の信徒》
2ターン目には《純視のメロウ》と非常に順調だ。
これは中村の《ボガートの放火魔》と相打ちとなり、中村の4ターン目、《曲がりうねりのロシーン》に対して
《マナの税収》と同等の《魔力の吸い上げ》!


しまった、という中村。
このまま攻め続けたい伊藤は《胸壁の見張り》を場へ、更にライブラリを削り始める。
中村は《信徒》ごとまとめて《炎渦竜巻》で流し、次のターンには《つまみ食い貯め》を送り込もうとするも
これが伊藤の《片付け》に遭う。
追加の戦力を《血印の導師》程度しか出せない中村、伊藤はここから《絹縛りのフェアリー》《胸壁の見張り》《深水路の導師》
と一気に展開。どうにか《邪教印の燃えがら》と《傷跡》のあわせ技で《深水路の導師》は退けるが、飛行戦力がまた止められない。
伊藤は攻撃しながら《フェアリー》の能力を使用し、着々とダメージを重ねていく。
結局中村はこれに対処できないまま、伊藤の《魔法をまわすもの》追加によって投了を余儀なくされた。


中村「まつがんに花を持たせてやったんだからね」


伊藤 敦、ドラフト3−0!