グランプリシンガポール 決勝マッチレポート

by Ishii "Mammoth" Taisuke


日本から遠く離れたシンガポールで開催されたグランプリ。
その決勝テーブルに辿り着いたのは2人の日本人だった。


一人は北山雅也古淵を拠点とするプレイヤーの一人で、2007年には日本選手権を優勝し、日本代表となったこともあるプレイヤーが、初のGPタイトルを狙う。


対するは斎藤友晴。2007POYをはじめ、数々のタイトルを持つ世界を代表するプレイヤーが元日本チャンプを迎え撃つ。


ちなみにテーブルジャッジは日本人レベル3ジャッジである進藤欣也氏であることを付記しておこう。


Game1
「先攻が取れるかが重要なんですよ」
戦前、北山はそんなことをうそぶきながら2個の6面体ダイスを振る特訓をしていた。


そんな北山に対して、斎藤は20面体でのダイスロールを提案。


北山は特訓の成果を活かすことができず、Game1は斎藤の先攻となった。


両者ともマリガンはなし。先攻の斎藤はフェッチランドから《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》をサーチし、
《密林の猿人/Kird Ape》→《密林の猿人/Kird Ape》→《モグの狂信者/Mogg Fanatic》→《モグの狂信者/Mogg Fanatic》
と、一見順調にクリーチャーを展開しているように見えるが斎藤の土地は1枚で止まったままであり、上記のクリーチャー展開も1ターンに1枚という展開である。


一方の北山は
《呪文嵌め/Spell Snare》、《謎めいた命令/Cryptic Command》、土地5枚
というZoo相手の後手なのにも関わらず、わりと悠長な手札をキープしている。
さらにドローが土地が2枚目の《呪文嵌め/Spell Snare》と土地という全く噛み合っていないドローをしており、このまま斎藤が押し切るかと思われた。


5ターン目に斎藤は4体の1マナクリーチャーでアタックを試みるが、北山は《謎めいた命令/Cryptic Command》(クリーチャータップ+ドロー)で北山は実質2ターン分のドローを得る。
祈るように引いた《謎めいた命令/Cryptic Command》分のドローには解決策は含まれていなかったが、返しのターンでの通常ドローでついに《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》という解決策を得る。


斎藤は、X=1の爆薬によって場のクリーチャーを全て吹き飛ばされるが未だに土地が引けず、クリーチャーが追加できない。


ついに手札が8枚となった斎藤はディスカードをしようとするが、北山はその前に《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》で斎藤の手札を確認する。
公開された手札は
《長毛のソクター/Woolly Thoctar》3、《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》、《火葬/Incinerate》、《稲妻のらせん/Lightning Helix》2、《流刑への道/Path to Exile
という内容であった。
土地を引かれたくなり北山はどのカードも底に送らず、返しのターンから三人衆と変わり谷でビートダウンを開始し、土地が引けない斎藤のライフを0にした。


北山1−0斎藤




Game2
先攻の斎藤は1マリガン。後手の北山はノーマリガンのままGame2はスタートした。
斎藤はフェッチランドから《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》をサーチし《密林の猿人/Kird Ape》をプレイという1戦目と同じ立ち上がりをする。
対する北山も1戦目と同じくドローゴー。


しかし、ここからの展開が違った。
今度は2枚目のフェッチランドを持っていた斎藤が2マナ目を確保しようとすると、北山はこれを《もみ消し/Stifle》!


これにより斎藤は2体目のクリーチャーを展開できなくなるが、
「もっかい!」
3ターン目に3枚目のフェッチランドを起動し、北山はこれをスルー。
2マナ目を確保した斎藤は場に《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》を追加する。
《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》や《謎めいた命令/Cryptic Command》等を封じられた北山は一気に苦しい状態になる。
しかも北山の手札は
《タルモゴイフ/Tarmogoyf》2、《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》、土地3枚
という状態で緑マナを確保していない北山は土地以外はプレイできないセルフ《オアリムの詠唱/Orim's Chant》状態になっている。


斎藤はさらに《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda》、《野生のナカティル/Wild Nacatl》を場に追加する。


この後、さらに追加の《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》をドローした北山は1枚も呪文をキャストすることなく投了を宣言した。


北山1−1斉藤



北山投了後、なぜかギャラリーから拍手が起こるが、北山は
「おいおいおい、勝負はまだ決まっていないのに実に不愉快だな」
と余裕の表情。


Game3
両者ともマリガンはなし。


・1ターン目
北山は《溢れかえる岸辺/Flooded Strand》をセットしてエンド。
斎藤もフェッチランドをセットして、これを即起動する。


これに対応して、北山はフェッチランドを起動。
顔をしかめる斎藤に対して、北山は悠々と《繁殖池/Breeding Pool》をタップインして宣言する。
北山「(もみ消しは)ありません」
斎藤「ないのー!?」
日本語がわからないはずのシンガポール人まで含めてギャラリー大爆笑。


結局、斎藤は《踏み鳴らされる地/Stomping Ground》から《野生のナカティル/Wild Nacatl》をプレイ。


・2ターン目
北山はドローゴー。
斎藤は《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》をセットして、@ナカティルを3/3にして北山のライフを減らし、さらに《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を追加。


・3ターン目
北山は《変わり谷/Mutavault》をセットして少考した後、《不忠の糸/Threads of Disloyalty》で《タルモゴイフ/Tarmogoyf》のコントロールを奪い、
さらに斎藤のターンでアタックしたナカティルをこれでチャンプブロック
斎藤は3枚目のランドから《長毛のソクター/Woolly Thoctar》を場に追加。


・4ターン目
北山は3/4となる《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をプレイし、島と《変わり谷/Mutavault》を立ててエンド。(墓地には土地・クリーチャー・エンチャント)
斎藤はソクターのみでアタックし、北山のライフを11に減らした後、《忘却の輪/Oblivion Ring》で《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をリムーブ。


・5ターン目
北山は2枚目の《タルモゴイフ/Tarmogoyf》をトップデックし、これを場に追加。
斎藤はまたも《長毛のソクター/Woolly Thoctar》のみでアタックするが、北山は今度はこれを手札からの《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でチャンプブロック
そして2枚目のリングが《タルモゴイフ/Tarmogoyf》を場から取り除く。


・6ターン目
手札に《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》を抱える北山は3色目の土地を求めて、アジア系プレイヤー独特のドローを行うが……


「引けないじゃん!」


引いたのは《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》。
これを自分のターンにプレイして、対象を自分にとり《祖先の幻視/Ancestral Vision》を底に送ることで待望のフェッチランドを入手する。


斎藤のターンにようやく出番とばかりにナカティルがソクターと一緒に北山に飛び掛る。
北山はライフを優先して、三人衆でソクターをチャンプブロック
(北山ライフ8)

斎藤は《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をプレイして、ナカティル2枚を手札に追加する。

北山は斎藤のターン終了時にフェッチランドから《蒸気孔/Steam Vents》をサーチ。
(北山ライフ7)

斎藤「(仕組まれた)爆薬持ってますかね?」
北山「さー、どうですかねー。
   あればいい勝負になりますねー」
(注)持ってます
斎藤「あったらやばいでしょ」


・7ターン目
北山は待望の《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》をX=3でプレイしてエンド。


斎藤は気を引き締めなおすために自分の頬を張り、その痛みに思わず
「いてえ」


ギャラリーの金子真実がぽつりと漏らす
「そりゃそうだ」


ここで斎藤は長考し、スロープレイによる警告がジャッジから言い渡される。
警告後、斎藤は《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をプレイし、ナカティルに即装備してナカティルとソクターでアタック。
(《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》はアタックせず)


北山は爆薬を起動して、ソクターと2枚の《忘却の輪/Oblivion Ring》が破壊される。


場の状態は以下の通り。
斎藤:イーオス、ナカティル(攻撃中、十手装備)、土地4枚(フルタップ)
北山:タルモゴイフ(※)2、土地5枚(フルタップ)

※サイズは4/5(土地、クリーチャー、エンチャント、アーティファクト


北山はタルモゴイフでナカティルをブロック。
ナカティルは墓地行きとなるが、十手の能力によりタルモゴイフは-2/-2されて除去される。



・8ターン目
北山は手札から《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》をプレイして、対消滅した上でエンドを宣言。
斎藤はイーオスで調達した2体のナカティルをプレイして同じくターンを終える。


・9ターン目
北山のアップキープ中に、斎藤は《稲妻のらせん/Lightning Helix》をプレイ(対象:北山)し、北山はこれを《呪文嵌め/Spell Snare》でカウンター。
しかし、自ターンでは特に動くことなくエンド。
ライフを大きく減らしている北山は、数ターン前から《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》での逆転を目論んでいたが、斎藤に先に十手をプレイされてしまったことにより目論見を大きく崩されてしまった。


斎藤は自分のターンでクリーチャー3体(《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》+《野生のナカティル/Wild Nacatl》2体)でフルアタック。レインジャーを《タルモゴイフ/Tarmogoyf》で討ち取り、ナカティル1体を《変わり谷/Mutavault》で相打ちにとるが、もう1体のナカティルにより北山のライフは4となる。


・10ターン目
こうなると北山の頼みは《梅澤の十手/Umezawa's Jitte》のみであるが、北山はそれが引けない。
そして、北山のターン終了時に斎藤は《火山の流弾/Volcanic Fallout》で北山のライフを2にし・・・・・・、


自分のターンに2発目の《火山の流弾/Volcanic Fallout》でこの激闘に決着をつけたのだった。


北山1−2斉藤


おめでとう、斎藤友晴!!